薬剤師としての業務拡大について
医療関連資格の中でも、近年薬剤師ほど急激に業務内容が拡大されたものはないでしょう。
日本における薬品の取扱はこれまでかなり硬い規制の枠組みの中にあったため、薬品を取り扱う業者や販売を行う企業、研究者までもが自由に自分たちの業務を拡大することができませんでした。
それは薬品という取扱が難しい仕事をする人材や企業の地位を固め、安定的に運営ができるようにするという効果はあったものの、反面でサービスが均一的で改善の余地のないものになったり、自由な研究やサービスの開発ができないという問題を生み出すことになりました。
そうした反省点を生かし、薬剤師業務は数年のうちにかなり自由度が高まり、さらに今後も拡大をしていく兆しが見られています。
薬品を取り扱う業務においては米国は日本の10~20年先を行っていると言われているため、今後しばらくは米国で導入されているしくみがほとんどそのまま日本でも使用されるようになるのではないかというのが一般的な予想です。
リテールクリニックによる薬剤師による医療行為
薬剤師に先立って日本で導入をされたのが看護師による上位資格の制度です。
これまで看護師の仕事は医師の指示がなければ独自の判断で医療行為や治療を行うことができませんでしたが、看護師資格に上位資格を作ることにより特定分野内での治療や診療に関わる行為を独自にできるようにしました。
このモデルになったのが米国にある「ナース・プラクティショナー(NP)」というものなのですが、これと同じような仕組みが薬剤師業界にもあります。
薬剤師における上位資格制度が「リテールクリニック」と言われているもので、米国内にあるドラッグストアではこの資格を持つ薬剤師が常駐し、簡単な診療を行い自らの判断で処方箋を作ることができるようになっています。
日本においてもこのリテールクリニックに似た業務を薬剤師の資格に含めようという議論がされているところです。
ただ日本における特定看護師制度は米国のNPと異なり、あくまでも看護師業務の一部を拡大するという権限の少ないものとなっていることから、仮にリテールクリニック制度が導入されるにしても米国の資格のように強い独自権限は付与されることはないのではないかとも言われています。
新たな薬剤師の仕事も登場しています
薬剤師の就職先は病院もしくは調剤薬局、ドラッグストアなどが一般的です。
職場はいろいろとありますが、いずれも処方箋にしたがって薬を調合して説明をしながら患者さんに渡すということが中心になっています。
今後新たな薬剤師の仕事として注目をされているのが、「地域の健康維持や予防医学の拠点」としての役割です。
そのための方法としてセルフメディケーションのための健康ステーションの設置が今実行に移されようとしています。
現在でも健康ステーションが機能している地域はありますが、そこに薬局薬剤師が積極的に介入できるようになることでまた従来までとは違った対策がとれるようになると期待されているのです。
健康ステーションでは病気治療のための薬品だけでなく、禁煙支援や健康増進のための食品提供、また認知症などの早期発見のための手段などが薬剤師の仕事となります。